遠藤捨三の世界

こちらは、空き地の詩人・遠藤捨三の愛好家(好事家)のための会員制ブログです。

オカルトとは何か。

 オカルトという言葉はラテン語の「隠されたもの」に由来しています。オカルティズムは日本語では「隠秘主義」と訳されます。では、何に対して隠された何のことなのでしょう。


 オカルティズムの源流として、グノーシス主義と言われるものがあります。グノーシス古代ギリシア語で「認識・知識」を意味します。神と宇宙観のひたむきな探求、とでもいいましょうか、政治権力や利権から隔離された、純粋な意味での哲学、民間思想です。グノーシス主義は1世紀に生まれ、3〜4世紀にかけて地中海世界で勢力を持ちました。


 ユダヤ教からキリスト教が自立して以来、様々なキリスト教の宗派が生まれていました。紀元2世紀から3世紀頃には、キリスト教をベースにしたキリスト教グノーシスが流行しましたが、308年にキリスト教ローマ帝国の国教に制定され、「三位一体性を信仰しない者は、異端と認定し罰する」という勅令が発せられました。グノーシスは異端とされたのです。国家統制による思想の弾圧が始まったわけです。思想と表現の自由が抑圧され、歴史的な芸術や文化的な創造物が極端に少ない5世紀から10世紀にかけて、中世前期はヨーロッパの「暗黒時代」と呼ばれています。世界史の授業では、突然イスラム圏やアジアの講義に切り替わりましたよね。キリスト教会の支配力が強まり、地下に「隠され」ながら綿々と息づいていた思想・文化がルネサンス期に噴き出し始めるまで、史上に残るトピックの芽は摘み取られていたということです。


 問屋制家内工業から、マニュファクチュア(工場制手工業)、工場制機械工業へと発展して来たヨーロッパでは、18世紀末から19世紀末にかけて、合理主義への反動としてロマン主義運動が勃興しました。「オカルティズム」という言葉は、パリの小ロマン派の文芸サロンに出入りしていたエリファス・レヴィというフランス人が提唱した言葉です。レヴィは、カバラ錬金術、ヘルメス信仰といったグノーシスの知識をまとめ、「魔術」として近代ヨーロッパに復興させました。魔術を意味するmagicという英語は、古代ペルシアの宗教、ゾロアスター教の司祭「マギ」(Magi)から派生した言葉です。マギは薬学や化学、あるいは数学の知識があり、彼らの行うパフォーマンスは一般人にとっては魔法のようなものでした。マギの行っていたマジックは現代においては、科学と呼ばれています。

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