「奪い合うとパイが減り、分かち合うとパイが増える」と言う金言があります。戦争と平和、争いと協調、様々な場面が浮かびます。今回は私のバンド活動の一幕から論じてみたいと思います。
バンド、ミュージシャンとライブハウス、ライブバーなどの「ハコ」「場」は一連托生です。演奏する場所がなければ、あるいはなくなれば、バンドマン、ミュージシャンというものは成り立ち得ません。逆に出演者のいないライブハウスもライブバーもありえません。共通するのはロックやジャズやブルース、音楽を愛していて、音楽とともに生きていきたい人たち、といったところでしょう。
システムを説明しますと、通常、アマチュアのバンドライブは、自主企画にせよ、ライブハウスのブッキングにせよ、4〜5組のバンド、ミュージシャンが出演します。これらは集客、ライブハウスの経営のための仕組みで、以前は出演者がノルマとしてチケットを買取り、手売りする、という形でしたが、ライブバーを始め近年は、ノルマをなしにして出演者の飲食で収益を賄う店も増えて来ました。主に土日にバンドのライブを行い、平日は弾き語りが多く行われます。
多くのライブハウスがコロナ禍で姿を消しましたが、ライブハウスの経営は思いの強さで成り立っているような仕事で、儲かる類いの商売ではありません。ダブルワークのオーナーもたくさんいらっしゃいます。バンド活動もライブハウスの経営も、よほど音楽に強い想いがなければ続けることは困難です。
観る側の利点としては、2,500円〜3,000円で4〜5組のライブ演奏を観れるということです。またライブバーはドリンクのメニューも豊富でテーブルや椅子があって、ゆったりと楽しむことも出来ます。フードメニューを設けているところもあります。現在、大手レーベルのミュージシャンは、相場として国内アーティストのチケットが8,000〜10,000円、海外ミュージシャンは15,000〜20,000円と高騰しています。馴染みのない方の中にはプロでもない人たちのライブなんて、、という声もありますが、場数を踏んでいるバンド、ミュージシャンの演奏力はプロと変わりはありません。私などは逆に、万人受けのするコマーシャルな表現よりも、尖った個性的な表現や、パーソナルな日常を歌った私小説的なものの方が好きですし、プロの1/3のチケット代で4倍のライブが楽しめるのですから、一般の方々より12倍得してる計算になります笑
ところが最近、身の回りでぽつぽつ問題になっていることがあります。ブッキングライブで、他の出演者の演奏中は楽屋で駄弁っていて、自分たちの演奏が終わると自分たちの客を連れて帰ってしまう、というバンドの存在です。対バン(自分たち以外の出演者)は、自分たちの演奏の時には演奏を聴いてくれる大事な「お客さん」であって、その日に限らずライブハウスという「場」の経営・維持をサポートする仲間、同人であるわけです。一連托生ですから。それでなくとも音楽が好きであれば他の出演者がどんなパフォーマンスをするのか楽しみですし、勉強になったり刺激をもらったりしてお互い切磋琢磨していくものです。出番の前に帰られるというのは、まあ単純にガッカリしますし、とくに相手の演奏時に拍手や声援を送ったり、要求された手拍子や合いの手に協力して盛り上げたりした後だと、裏切られたような気分になります。一言でいうと場がシラけるわけです。興醒めです。ライブって場を盛り上げて楽しむものですから致命的ですよね。要するに重大なマナー違反ということです。
それがなぜか50を越えたおじさんの私より先輩の方々に多いのです。どんな理由があっても、権利と義務、自由と労働は1セットですから、自分たちだけでやりたい場合は、貸し切りでワンマンライブを敢行するものです。大きな赤字にならないようにがんばって40人集客してすれば、ライブハウスの経営側の利益も出て御の字です。社会人としては家計、財政の観念がないわけがないと思います。客を引き連れて先に帰る場合、その分残りの2バンド、3バンドの演奏時のドリンク売り上げは無くなるわけです。店側は出演者の頭数も考えてブックしてますからね。この人数ならこのくらいドリンクが出て黒字になるだろうと。仕入れと同じです。見込み出して経営しているのです。出演者側もそれが分かっているので、酒の持ち込みはタブー中のタブー、恥ずかしい行為です。それをやってしまうご年配がなぜか多い。年金もらってるから経営収支は関係ないのでしょうか。年金の中でやりくりために、貸し切りはおろか、酒もライブハウスにはオーダーせずにコンビニの缶ビールを持ち込んで呑むのでしょうか。高齢者になってマナーも守れないってもう醜態ですよね。若い人を見守るくらいの年長者にはなりたいです。
気を取り直してパイが増える話しをしましょう。