私の所有するギターはTOKAIの81年製のテレキャスターで、ストリングベンダーが付いているものです。学生時代に友人から8万円で購入しました。元値は15万円だったと思います。いくつか説明しますと、まずテレキャスターというのはアメリカのFender社が51年に発売をスタートしたエレキギターです。TOKAIというのは東海楽器製造株式会社、静岡県の企業です。TOKAIテレキャスターはFenderテレキャスターのレプリカ、コピーモデルとなりますが、木材の質、コピー技術ともに高く、現在では「ジャパン・ビンテージ」として高値がついています。
私自身、枯れた、ブルースっぽい音がすると気に入って使っていましたが、ピックアップ(弦の集音マイク)のパワーのなさ、低音の物足りなさが気になっていました。また、私はテレキャスターの音が大好きなのですが、エピフォンのカジノというエレキギターをメインに使っている上、TOKAIとはいえテレキャスターは一本持っているため、Fender社のビンテージ・テレキャスターを買うことは躊躇っていました。ちなみにFender社のビンテージ・テレキャスターの中古相場は50万〜300万円と、決して安くはありません。
趣味で始めたエフェクター(ギターの音を変化させる機材)の自主制作で電子工作の知識と技術もついて来たところ、Fender社の復刻ビンテージ・ピックアップの商品が目に入りました。TOKAIのテレキャスターは、良質な木材を用いたボディーとネックには定評があり、私自身、生鳴りが良くなって来ているのを実感していましたので、これはピックアップを替えなくては勿体無いと思い、Fender社の'52年型の復刻ピックアップを購入、換装しました。効果は覿面で、しっかりした低音にキンッと抜ける高音、Fender社のテレキャスターと同じ音になりました。
ステージ使用にも復帰しましたが、弦を巻く「ペグ」と弦を支える「ブリッジ」という金属パーツがまだ気になっていました。というのも「TOKAIは金物が弱い」と言われており、自分自身もチューニングの不安定さと、オクターブ音痴(1オクターブのチューニングのズレ)を騙し騙し使っていたのです。
GOTOHというブランドがあります。後藤ガット有限会社という群馬県伊勢崎市の会社のブランドになります。FenderのOEMなども手掛けていますが、このGOTOHのペグ、ブリッジが本家を凌ぐほど評判がよく、オクターブ音痴がブリッジサドルのせいかフレットのせいかは分かりませんでしたが、とりあえず金物はGOTOHにしようと決めていました。ピックアップ交換で気を良くした私は、この際、ペグ、ブリッジプレート、コンデンサーと、気になっているところを全部交換してしまおうと思い立ちました。
いっぺんにやると何の効果か分からなくなってしまうので、まず弦を外さずに作業出来るコンデンサーの交換。こちらは定番のSPRAGUE社のオレンジドロップ・コンデンサーに交換しました。簡単なハンダ付け作業です。購入した製品は、0.001uF(102k)のコンデンサーに150kの抵抗をつけたハイパス(高音のみ通過させる)回路の商品で、ボリュームを絞った際の「ハイ落ち」を解消する仕組みになっています。高音成分はテレキャスターのキモですからね。
こちらも効果覿面。「コンデンサーなんか替えても大して変わらない」と言う人もいますが全然違いますね。高音の抜けは変わらず、よりファットで豊かな音色になりました。「フェンダーのテレキャスター」から「オールドフェンダーのテレキャスター」に格が上がった感じです。
そしてついにGOTOHの金物に交換する日が来ました。まず弦を外し、ブリッジプレートから。最も響きが良いとされる真鍮製のIn-Tuneサドルのものを選びました。ペグはマグナムロックのクルーソンタイプ。クルーソン社のペグは重量が軽く、ネック鳴りを妨げないと言われています。全般に精度よりテレキャスター特有の音色重視でいきました。
ペグ交換の際、ガイドも交換しましたが、これが固く難航しました。元のガイドを外す際、裏から金槌で少しづつ叩いて出すのですが、ヘッドの表面の木が少し剥がれてしまいました。緩いと音色にも影響するのでタイトに嵌め込むことは必須なのだと思います。ペグ交換の際は、ガイドは替えなくてもいいかもしれません。老婆心ながら、替えない方が作業は断然楽で私のようにヘッドを傷つけるようなこともありません。(タイトボンドで修正しました。)
美しき私のテレキャスター。
TOKAIのロゴを前オーナーが剥がしてのっぺらぼうになっていたため、Fenderのデカールを貼ってあります。
さあ、細かい調整はさて置き、試奏です。もう